評価における生成AIの影響

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評価における生成AIの影響

本ページでは、教育評価における生成AIの影響について、まとめています。今後の高等教育では、課題作成における生成AIの使用を見込んだ上で、生成AIに対応した評価方法を選んでいくことが求められます。

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生成AIと教育評価

1. 生成AIの問題点:判別の難しさ

教育評価における生成AIの問題点は、学生が生成AIのみを使用して成果物を作成したとしても、その成果物が学生かAIのどちらによるものなのか、技術的に判別が難しいことにあります。剽窃チェックツールも開発されていますが、現時点では正確ではないため、それらのツールによる判定を信用しない方がよいでしょう。たとえ生成AIの不正使用が疑われたとしても、学生が生成AIを使用していないと主張すれば、教員はその言葉を受け入れるしかない場合もあります。

そのため、教員は生成AIに対応した評価方法を選んでいく必要があります。本ページに紹介されている工夫も参考にしながら、これまでの評価方法を見直してみてください。

2. 既存の評価方法に対する生成AIの影響

生成AIは、テキストに関する課題であれば何でも対応することができます。そのため、生成AIは以下の表のように、知識・理解や思考・判断に関する筆記試験、論述課題、レポート課題といった学習評価に対して強い影響を及ぼすと考えられます。科目によっても影響の大きさは変わってくるでしょう。一方において、生成AIの影響の少ないとされる技能や関心・意欲、態度に関する観察法や口述(面接)試験、実技・実演、ポートフォリオ、自己評価といった評価方法を取り入れることも有効な対策となります。

生成AIの影響の多い評価形式
選択回答式問題:多肢選択問題、正誤問題、順序問題、穴埋め問題
自由記述問題:説明問題、推論問題、作問法
パフォーマンス課題:小論文、研究レポート、研究論文、プレゼンテーション、実験計画

生成AIの影響の少ない評価形式
活動要素の点検:発問応答、活動観察
実技テスト:面接、口頭試問、実験器具操作                 (吉田 2023)


生成AIに対応した評価方法

今後、課題作成の際に多くの学生が生成AIを使用することが予想されます。たとえ生成AIを禁止したとしても、現実問題として学生の生成AI利用を止めることはできないでしょう。そのため教員は、従来の評価方法を再検討し、生成AIの不適切な利用を防ぐ対策を講じる必要があります。また、学生と教員間で生成AIの使用上の注意点を事前に共有しておき、生成AIの不正使用を予防することも大切です。

1. 生成AIの不適切な利用を防ぐ対策

教育評価における生成AIの対策は、授業内容や評価方法によって変わってきます。そこで、以下にあげた対策のうちからご自身の評価方法に合った対策を選ぶようにしてください。

① 問題作成と試験形式の工夫(クリックすると対策が表示されます)
   22年以降のテーマを設定する、口頭試験にする 等

 ・事前に生成AIで試験問題を試してみて、生成AIが対応できた場合は別の問題を検討する
 ・授業内でディスカッションした内容を書かせる
 ・授業内で短いライティング課題を頻繁に課す
 ・口頭試験にする
 ・長い文章を要約させる
 ・インタビュー、コンセプトマップ、動画、ディベートなど、レポート形式以外の課題にする
 ・オンライン試験では、問題文は(コピペしにくいように)画像にする
 ・音声と映像を組み合わせた動画で出題する
 ・モラルに反する質問やプログラミングに反する質問への回答を求める

② 評価とフィードバック(クリックすると対策が表示されます)
   対面で段階的に評価する、プレゼンでQAも行う 等

 ・ピアや教員との対面ミーティングを組み合わせて段階的に評価する
 ・生成AIで作成した成果物ではないという内容に署名させる
 ・生成AIを利用していない時に学生が書いた文章と提出されたものを比較する
 ・引用を多用する課題を課す
 ・学生が引用した文献を抜き打ちで実在するかチェックする(ことを伝える)
 ・対面または同期型で指導する成果についてのプレゼン課題でQAも行う
 ・手書きか口頭で、学んだことのリフレクションを提出させる
 ・ピア評価を取り入れて建設的なフィードバックができる能力を評価する
 ・生成AIに書かせた文章を批評させる
 ・引用文献には文献データベースへのリンクを付けさせる

③ 課題の提出(クリックすると対策が表示されます)
   手書きの課題にする、執筆プロセスも提出させる 等

 ・注釈を付けることを課す
 ・課題を作成する過程についての考察を課す
 ・手書きのレポート課題にする
 ・レポートのテーマと自分の個人的な経験を統合する課題にする
 ・レポートの執筆プロセス(下書きや参考文献、編集履歴等)も提出させて評価対象にする
 ・引用文献のスクリーンショットの提出を課す

④ 方針の明示と周知(クリックすると対策が表示されます)
   学問的誠実性を強調する、使用ルールを明示する 等

 ・試験で許可する・しないツールを明記する
 ・出力の不正確さ、偏り、論理や文体の問題の例 を学生に示して注意を促す
 ・剽窃チェックツールが存在し、進化しているこ とを学生に伝える
 ・AIの利用に関する方針をシラバスに明記する
 ・学問的誠実性を強調し、不正行為の結果を理解させる
 ・書くプロセスが学びになぜ大切かを伝える
 ・内発的動機づけを促す

※ 以上は論文、記事、大学のウェブサイト等の情報をChatGPT4でカテゴライズして導いた対策です(浦田 2023)。

2. 推奨されない対応

一方において推奨されない対応として以下の4点があげられます。特に③と④に関しては考慮が必要です。
生成AIに剽窃チェックをさせる
  出力はでますが、その出力自体が性格ではない場合があります。
剽窃チェックツールで判定する
  現時点での剽窃チェックツールによる検出率は4分の1程度といわれています。また、プレイバシーポリシー上問題もあります。
手書きでの課題提出を強制
  合理的配慮が必要な学生がいる場合があります(Mills&Goodlad, 2023)
学生に生成AIの利用を強制する
  学生のプライバシーへの配慮が必要となります。場合によっては、プロンプトを提出させて教員が出力する、代替的な活動を提供するなどの手段を検討しましょう。

3. 生成AIの使用に際して学生に伝えること

生成AIの適切な使用について学生に早めに伝えることで、トラブルを未然に防ぐことが期待できます。以下に事前に学生に伝えておくことについて挙げます(浦田 2023)。

  1. ・生成AIを適切に使用しない場合は、学業上の不正行為とみなされること
  2. ・生成AIの使用は、あくまでも学習サポートに限ること
  3. ・情報の分析などで生成AIを使用した場合は、その旨を明記すること
  4. ・意図しない盗用、著作権上侵害、個人情報・機密情報の漏洩の可能性といった法的リスクがあること
  5. ・「ハルシネーション」や参考文献は実在しないものが多いといった出力の信頼性の問題があること
  6. ・詐欺への注意として、安易にインストールしたり課金したりしないこと
  7. ・生成AIの不正な使用は、誠実、信頼、公正、尊敬、責任、勇気(ICAI, 2023)といったアカデミック・
     インテグリティの原則に違反しうること


参考資料

  • ● OpenAI社の教育向けのページ:Teaching with AI
     https://openai.com/blog/teaching-with-ai
  • ● 浦田悠(2023)「授授業における 生成AIの利用について」(2023年大阪大学FDフォーラム講演資料)
     ダウンロードはこちら(PDF版)から
  • ● 吉田塁(2023)「オンラインイベント 教員向けChatGPT講座〜基礎から応用まで〜」(2023年5月13日実施のオンライン講座資料スライド)
     スライド資料はこちらの吉田先生のHPからダウンロードできます。


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