本ページでは、教育評価における生成AIの影響について、まとめています。今後の高等教育では、課題作成における生成AIの使用を見込んだ上で、生成AIに対応した評価方法を選んでいくことが求められます。
教育評価における生成AIの問題点は、学生が生成AIのみを使用して成果物を作成したとしても、その成果物が学生かAIのどちらによるものなのか、技術的に判別が難しいことにあります。剽窃チェックツールも開発されていますが、現時点では正確ではないため、それらのツールによる判定を信用しない方がよいでしょう。たとえ生成AIの不正使用が疑われたとしても、学生が生成AIを使用していないと主張すれば、教員はその言葉を受け入れるしかない場合もあります。
そのため、教員は生成AIに対応した評価方法を選んでいく必要があります。本ページに紹介されている工夫も参考にしながら、これまでの評価方法を見直してみてください。
生成AIは、テキストに関する課題であれば何でも対応することができます。そのため、生成AIは以下の表のように、知識・理解や思考・判断に関する筆記試験、論述課題、レポート課題といった学習評価に対して強い影響を及ぼすと考えられます。科目によっても影響の大きさは変わってくるでしょう。一方において、生成AIの影響の少ないとされる技能や関心・意欲、態度に関する観察法や口述(面接)試験、実技・実演、ポートフォリオ、自己評価といった評価方法を取り入れることも有効な対策となります。
たとえ生成AIを禁止したとしても、現実問題として学生の生成AI利用を止めることはできません。そのため教員は、学生による生成AIの使用を前提に、従来の評価方法を再検討し、生成AIの不適切な利用を防ぐ対策を講じる必要があります。以下に、授業を再検討する際の方針として、以下の二つの評価基準を紹介します。
① AIアセスメントスケール
② SHAREモデル
「AIアセスメントスケール」は、教育評価におけるAI活用の適切なレベルを判断するために、Perkins氏が開発した5段階の指標です。このスケールの狙いは、学生の批判的思考力や問題解決能力を重視しつつ、AIを活用して作業の効率化や創造性の向上を図ることにあります。タスクの各要素ごとにスケールを適用することで、従来の評価方法とAIとをバランス良く組み合わせることができます。参考資料より本スケールのPDF版とパワーポイント版をダウンロードすることができます。

授業内での具体的な体験、ゲストスピーカーの話、ローカルな文脈などを組み込み、現実社会に近い課題設定にする。
「架空の事実や存在しない文献が含まれていた場合は大幅に減点する」と事前に警告し、ファクトチェックを徹底させる。
口頭試問、プレゼン、手書きのクイズなどを組み合わせる。
AIからのフィードバックや、課題に取り組んだプロセス自体について振り返らせる記述を求め、メタ認知を評価する。
一発勝負の提出ではなく、アウトライン作成→ドラフト→修正といったプロセスを可視化し、その過程も評価対象とする。
生成AIに対応した授業設計について、AI-Resistant/Conductive/AI-Expansiveという三つの類型に沿って、具体例を以下に示します。
・最新または固有のテーマを設定する
ごく最近の出来事やローカルな内容、学生の個人的経験をテーマに
・実世界の経験や観察を組み込む
フィールドワーク、実験、サービスなど直接的な体験や観察を課題に
・文字以外の成果物を重視する
プレゼン、口頭試験、動画、Podcast、ポスター、コンセプトマップ等
・批判的思考と応用を求める課題を出す
資料の解釈、複数の情報源の統合等、高次の思考スキルを必要とする課題
・授業内での議論を反映させる
授業内の議論の特定の視点を含めるような課題
・短い課題を繰り返し出す
小規模な課題を頻繁に出す
・ブレーンストーミングツールとして利用
初期段階でのアイデア出しや構成を検討するために利用する
・プロセスの可視化を求める
最終成果物だけでなく、それを作成したプロセスも評価する
・AIからのフィードバックを活用する
自分で作成した成果物に対するフィードバックをAIに求めて改善する
・引用や情報源の明示を求める
AIが生成したものもその情報源を明記し、引用ルールを徹底する
・AIを活用した高度なプロジェクトをする
大規模なデータ分析、シミュレーション、プログラミングなどの高度な課題に挑戦させる
・AIで生成したコンテンツを批判的に評価する
AIの生成物の強み、弱み、正確性、バイアス、倫理面を詳細に分析・評価する。意図的にAIを騙す・誤った情報を生成させる、矛盾を引き出す課題を出す
・AIとインタラクティブに対話する
ロールプレイング、対話のシミュレーションを元に、対話の質や洞察や学びを評価する
・画像生成AIを活用する
プロジェクトの視覚化やポスターの作成を課題とする
・プロンプトエンジニアリングを学習する
プロンプトコンテストを開催する
学生と教員間で生成AIの使用上の注意点を事前に共有し、生成AIの不正使用を予防することも大切です。
生成AIの適切な使用について学生に早めに伝えることで、トラブルを未然に防ぐことが期待できます。以下に事前に学生に伝えておくことについて挙げます(浦田 2023)。
生成AIを使用していない場合:
本論文において、生成AIは一切使用していない。
生成AIを使用した場合:
本論文では、以下の用途で生成AIを活用した。生成された文章は批判的に検討し、情報の正確性を確認した上で、文章をそのまま使用するのではなく、すべて自分の言葉に修正している。
・アンケート(インタビュー)項目のアイデア出し
・誤字脱字や文法の修正チェック
・論文構成のアイデアサポート
・想定読者向け表現改善アドバイス
・論文の初稿に対するフィードバックサポート
(具体的な内容変更は行わず、あくまで構成上のアドバイス)
一方において推奨されない対応として以下の4点があげられます。特に③と④に関しては考慮が必要です。
出力はでますが、その出力自体が正確ではない場合があります。
現時点での剽窃チェックツールによる検出率は4分の1程度といわれています。また、プライバシーポリシー上問題もあります。
合理的配慮が必要な学生がいる場合があります(Mills&Goodlad, 2023)。
学生のプライバシーへの配慮が必要となります。場合によっては、プロンプトを提出させて教員が出力する、代替的な活動を提供するなどの手段を検討しましょう。
