大学院等高度副プログラム「未来の大学教員養成プログラム」

Future Faculty Program (FFP)

修了生の声
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修了生の声

※記載している年、所属情報はインタビュー当時のものです。

2020年
FFP 特別座談会!(前編:現受講生から修了生へのお悩み相談)

FFP座談会の概要

大学の授業実践をまだ担当していないFFP現受講生の不安に対して、
FFP修了生はどのようなアドバイスをくれるのか?
FFPの現受講生と修了生、それぞれが語るFFPの魅力とは?
初の試みとして、以下の6人のメンバーで座談会を行ないました!(所属・学年は座談会当時のものです)

【現受講生】
松岡 隆生さん
 言語文化研究科M1 / TA(ティーチングアシスタント)の経験有り / 
 学術的な文脈におけるヘッジ表現・ブースター表現を研究
遠藤 清人さん
 工学研究科M2 / LS(ラーニングサポーター)・塾講師の経験有り / 
 次世代半導体材料の高品質化を研究
李 頌雅さん
 文学研究科D2 / TA・LS・RA(リサーチアシスタント)の経験有り /
   留学生とチューターの授業外活動における言語学習の実践を研究

【修了生】
中屋 佑紀さん
 理学研究科出身 / 20193FFP修了 / 塾講師および大学での非常勤講師経験有り / 
   土や水の中の「腐ったもの」のでき方や速さを研究
アリザデ メラサさん
 情報科学研究科出身 / 20183FFP修了 / 大学での非常勤講師経験有り / 
   先端技術を用いて言語や情報教育における学習支援を研究
野瀬 由季子さん
 言語文化研究科D2 / 20183FFP修了 / 日本語学校および大学での非常勤講師経験有り / 
   授業観察による現職日本語教師の変容を研究

外国人留学生の就職事情について

野瀬(司会):みなさん、今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。FFP修了生の中屋さんとメラサさんはすでに研究員として研究活動をされながら、大学で非常勤講師の経験もお持ちですよね。一方で、FFP現受講生の皆さんは、大学での授業実践はまだ経験されていないのではないかと思います。何か、修了生に聞いてみたいことなど、ありますか?

李(受講生):私は留学生で、大学院から日本に来たんですが、日本の大学で常勤としてうまく就職できるのかな、という不安があります。

野瀬(司会):確かに、その不安は多くの留学生が感じていると思います。同じく留学生として大学院から日本に来られたメラサさんは、この点、どうでしたか?

メラサ(修了生):まあ、今のご時世、日本人であっても就職が難しいっていうのは言われていますよね。

一同:うんうん。

メラサ(修了生):私の場合は、指導教員の先生のサポートも大きかったです。一人で就活するのは大変なので、指導教員の推薦やサポートを活用するという手段もあります。加えて、外国人だからこそのメリットもあると思います。特に、ダイバーシティの観点からは、外国人は求められている存在だと言えます。さらに、人数も少ない女性研究者の存在は重要だとされていますしね。だから、不安もあるとは思いますが、いろんな方々のサポートも受けつつ、安心して頑張ってください!

野瀬(司会):中屋さんは、李さんのお悩みについて、何かアドバイスするとすれば?

中屋(修了生):まず、FFPを受講してよかった理由の一つは、縁ができたことです。FFPを通じてできる縁、それはFFPの先生であったり、FFP修了生であったりします。そういう方たちから、非常勤講師を紹介していただける場合があります。

野瀬(司会)ちなみに中屋さんが非常勤をされたのは、どのタイミングだったんですか?

中屋(修了生):2016年にFFPを受講して、2017年から非常勤講師で授業を担当しはじめました。私は、FFPの先生方から授業やセミナーの講師の職を紹介してもらったりしています。最近では、FFP修了生である自分からFFPの後輩に向けて、非常勤講師を引き継げるような情報も発信しています。大学での就活について思うことは、ポスドクやドクターが助教になるまでの最初のステップが大変だということです。でも、FFPでの経験があれば、どこかで非常勤講師をする際に、周囲の人たちとの差をつける機会につながってプラスに働いていきます。私は日本人なので、外国人の方々の就活事情については詳しくないですが、英語等の外国語で授業をできる人が求められている場合もあるので、常にいろんな方面にアンテナを張っておくとよいかもしれないですね。

野瀬(司会):FFPを通して、縁が繋がっていくところがいいですよね。

学生とのコミュニケーションについて

野瀬(司会):李さんと遠藤さんは、学生とのコミュニケーションについてもお悩みがあるみたいですね。

李(受講生):私は、学生とのコミュニケーションが上手くいくかが心配です。今、TAをしているんですが、学生たちが授業内容や先生の指示を、TAである私に確認してくることがあるんです。将来、学生とのコミュニケーションを円滑にできるのかな、と思って。

遠藤(受講生):私は、学生との距離の詰め方が難しいなと。自分自身、そんなに喋る方ではないので、ものすごく端的に伝えて、後のフォローはあまりせず、結果的に壁を作るような状態になっている点を指摘されたことがあるんです。でも、どうやって距離を詰めていけばいいかわからなくて。

野瀬(司会):なるほど。修了生で大学で非常勤講師も経験されているお二人は、学生とのコミュニケーションを取る際に意識されていることはありますか?

メラサ(修了生):私の場合は、日本人学生に対して英語の授業を担当しています。できるだけわかりやすい英語表現を使うように意識しているのですが、どうしても伝わらない時は日本語で伝えるなどして、ミスコミュニケーションを起こさないようにしています。

中屋(修了生):私は、これまで塾講師と非常勤講師の経験がありましたし、そもそもコミュニケーションへの苦手意識はそこまでなかったですね。でも、FFPを通して、情報を構造化して学生に伝えることの重要性や、学生の既有知を引き出す方法には、これまで以上に意識が向くようになりました。コミュニケーションへの苦手意識がそこまでない人にとっても、FFPで自分の授業を記録して見返してみると、意外と自分が早口だな、と気づいたりします。

野瀬(司会)私も、学生とのコミュニケーションはそんなに苦手ではないですかね。だから、「大学授業開発論Ⅱ(FFP2)」での90分間の授業実践でも、自信を持って授業を進めていました。学部生向けの「プレゼン技法」についての授業実践だったんですが、大学生だったらある程度は何でもできるだろう、と思って、学生を前に立たせて、ポンポンプレゼンをさせる形で授業を進めていました。でも、授業後の意見交換会で、FFPの受講生から「前に立って話すのが苦手な学生もいるだろうし、その点はもうちょっと配慮があってよかったのでは…」というコメントをもらったんです(笑)。遠藤さんたちのお悩みに対する答えになっているかどうかはわかりませんが、私は、他者から授業を見られることで、自分と違うタイプの学生を意識できるようになり、その学生に応じた接し方のバリエーションが増えたかなと思います。

李(受講生)・遠藤(受講生):なるほど。ありがとうございます。

FFP2(大学授業開発論)での授業実践について

野瀬(司会):それこそ、この前、松岡さんは「FFP2大学授業開発論Ⅱ)」で90分間の授業実践を阪大の学部生・院生向けになさっていましたが、実際に授業をやってみて、いかがでしたか?

松岡(受講生):そうですね…。授業実践の日に欠席する学生がいて、ペアワークが1組しかできないという予想外なことが起きたんですが、欠席する学生がいた場合の授業計画を考えていなかったので、そこが大変でした(笑)。だから、授業への周到な準備が必要だなと思いました。あと、授業後に行なうFFP受講生との意見交換会では、受講生の方から私の声のトーンについての意見をもらって、そのコメントが自分にとってすごく気づきになりました。

野瀬(司会):声のトーンについて、具体的にどのような意見をいただいたんですか?

松岡(受講生):その方の指摘は「松岡さんは、話してる時の声のトーンが単調になりがち」というものだったんですが、その点について自分では全然気づいていなかったんです。「そんなことある!?」って(笑)。でも、自分の授業実践の映像を改めて見直してみると、「確かに単調なトーンで話しているかも」と思うようになりました。今後、どのように変えていくのかは意識していきたいところです。

野瀬(司会):なるほど。他者の視点と自分の視点からのリフレクションはやっぱり重要ですよね。遠藤さんも、FFP2で90分間の授業実践をされたそうですが、どうでしたか?

遠藤(受講生):私は学生との双方向型の授業に慣れていないので、かなり準備をして授業実践に挑んだんです。でも、当日はタイムマネジメントに精一杯で、学生の発表に対してフィードバックをあまりせずにどんどん進めてしまいました。意見交換会でも、FFPの受講生の皆さんに、学生を十分に見ることができていないことを指摘されました。今後は、学生へのフィードバックを丁寧に行なったりリアクションを取ったりしよう、という気づきがありましたね。

野瀬(司会):ちなみに、このFFP2では授業実践の場所をなかなか確保できずに苦労する受講生もいるんですが、遠藤さんはどの先生の授業で実践を行なったんですか?

遠藤(受講生):指導教員の先生が担当されている、工学部の専門科目の授業です。

野瀬(司会):なるほど。それはありがたいですね。ちなみに、工学部の専門科目では、ディスカッションという授業形態は割と一般的なんですか?

遠藤(受講生):私の経験上、工学部の専門科目では講義法一辺倒が多い印象です。ただ、学部時代の私の実体験として、講義法だけでは授業はわかりづらいし眠くなっちゃってたんですよね(笑)

一同:(笑)

遠藤(受講生):だから、自分の授業実践の時にはディスカッションを絶対に取り入れたいと思っていました。多分、講義法だけだと伝わらないな、というか、学部の時はそれさえわからず、なんとなく「わかりづらいな、この授業」って感じていたんです。でも、FFPを受講して、授業形態を変えると伝わり方が変わるということにも気づきました。

授業形態について

野瀬(司会):遠藤さん以外の皆さんは、ご自身の専門分野において一般的に行なわれている授業形態と、現在ご自身がなさっている授業形態との間に、何かギャップはありましたか?

メラサ(修了生):基本的に、第二言語習得の分野ではペアワークやディスカッションが多いので、私の場合、そのギャップはなかったかな。ただ、授業形態っていうのは授業内容にも依存するでしょうね。確かに、工学の授業だと講義法になりがちですよね。講義でないと間に合わない知識伝達系の科目もありますし。

遠藤(受講生):そうですね。

中屋(修了生):私は現在、必修の一般教養の数学を担当しています。内容をどうしても詰め込まなければならないような授業ではないので、ただ情報を詰め込む授業スタイルは取らず、ディスカッションをさせる、ペアで解かせる、といった活動を多く取り入れています。

野瀬(司会):なるほど。

中屋(修了生):ただ、FFP修了生が有志で立ち上げた「大阪大学若手FD研究会」というのがあるんですが、その研究会で、看護系の方が「看護の科目では教えるべき内容が多くて、ペアワークにすると教え漏れが出る可能性がある」とおっしゃっていたんです。だから、授業によっては、どのような授業形態を取り入れたらよいのかについて考えるのに苦労されている分野の方もいらっしゃるんだろうなと思います。

一同:うんうん。

非常勤講師は、どこまでのスキルを求められる?

松岡(受講生):もう一つ、修了生の皆さんに質問してもいいですか?

野瀬(司会):ぜひ!

松岡(受講生):実は、今年の4月から中学校・高校で非常勤講師を始めることになっているんです。高校は教科担当、中学は放課後の自習をサポートする予定です。そこで聞きたいんですが、働き始めの1年目は学校側からどのくらいのスキルを求められるものなのでしょうか?中学・高校と大学ではまた違うとは思うんですけど…。学部時代に教職課程を履修していた時は、プロのレベルのスキルが求められると聞いたんですが、実際のところは、どのようなスキルをどこまで求められるんでしょうか?

中屋(修了生):まずは、生徒や学生から舐められないこと(笑)。

一同:(笑)

中屋(修了生):たまにタメ口の学生がいるのですが、最初はとにかく舐められないことを意識していました。まあ、要するに、「寝てもいい授業だな」などと思われないように気をつけていました。

野瀬(司会):雰囲気づくりって重要ですよね。

メラサ(修了生):うんうん。英語の授業の場合も、学生のモチベーションとエンゲージメントを高めるのが大変なので、教員の性格とか授業のやり方が大事になってきます。私は、楽しく学習できるような授業づくりを心がけていました。

野瀬(司会):いいですね。逆に、1年目でプレッシャーみたいなものを感じたことはありますか?

メラサ(修了生):うーん、仕事のプレッシャーはなかったんですが、教員って、採点や文章添削等の作業など、授業外にやるべきことがたくさんあるので、シンプルに「忙しいなぁ」とは感じていました。自分の研究のこともありますからね。担当する授業コマ数を多くし過ぎると、研究と教育実践のバランスを取るのが大変になると思います。

野瀬(司会):バランスを取るのって難しいですよね。

一同:うんうん。

野瀬(司会):中屋さんとメラサさんの観点以外に付け加えるとすれば、一教員として、授業での目標や位置づけを把握しておくといいかもしれませんね。特に大学だと、自分の担当している授業が大学教育全体のどの位置づけになっているのか、ということが見えにくい。中学や高校でも同じような状況が生まれる可能性はあると思います。なので、誰かしら相談できる先生に、授業の位置づけや学生・生徒のモチベーションなどについて聞いてみると、自分の振る舞い方もわかってくるかもしれないですね。

中屋(修了生):そうですね。授業の位置づけや目的によって授業の進め方も様々なので、いろんな方々に話を聞いてみるといいかもしれませんね。

松岡(受講生):なるほど、ありがとうございます。

座談会前編を終えて

各々の専門分野が異なることもあり、様々な悩みや回答が得られました!
FFPを受講したからこそ気づけたこと、FFPで授業実践をして実感したことなどが意見交換から出てきました。
座談会後編では、FFPを受講することにどのような魅力があるのかについて、さらに深く聞いていきます!

座談会後編:FFPの魅力とは?

FFP受講希望のみなさんへ

必修科目「大学授業開発論Ⅰ」を受講したい方は、期日までに、KOANにて①副プログラム「未来の大学教員養成プログラム」の申請②「大学授業開発論Ⅰ」の履修登録をしてください。
授業実施2週間前ごろに、履修登録者に事前課題等のご連絡をします。
*大阪大学の副プログラムに関する説明や申請方法はこちらをご確認ください。
*2022年度からウェブエントリーならびに選考がなくなりました。必ず上記の①②を済ませてください。